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「研究開発とビジネスの間」に張る利点

技術に賭けるスタートアップの利点の記事で時間の投資で強みを構築できることと、優秀な仲間を集めやすいという話を挙げました。
上記の記事では書ききれなかった利点があると述べていました。それは技術起点の会社は「研究開発とビジネスの間」にある有望なアイデア発見のチャンスがあることです。
 
最近のスタートアップが有望なアイデアを発見する難易度はあがってきていると思います。そんな中で、アイデア(市場)発見領域の一つとして「研究開発とビジネスの間」は魅力があるのではないかと考えるようになりました。
 
「研究開発とビジネスの間」というテーマのパート①として、研究開発とビジネスの間に張ることで、有望なアイデアの発見の可能性について今回の記事では取り上げます。
 
 

スタートアップが難しくなってきた

最近はスタートアップの難易度が高くなってきているように感じます。
 
インターネット領域の成熟によりメディアなどの領域は資本を持つ企業が有利な状況に変化。また、様々な業界の経験者やビジネス経験を積んできた方がスタートアップに挑戦するようになってきたことである程度顕在化した市場はビジネス戦闘力の高い会社が抑えていく。そういった状況もあり、そもそも有望な市場を見出すことの難易度が高くなっているように感じます。
 
私の周辺では研究開発からビジネス化を模索してきた会社が着実にラウンドを重ねています。名古屋の特性という側面もあるかもしれませんが、元々研究領域から事業を開始しています。創業者の方たちには社会人経験がほとんどないという人も少なくありません。そういう面では、アイデアの発見領域として、研究開発からビジネス化を模索するというアプローチは悪くないのではないかと感じ始めました。
 
また、ディープテック中心に研究開発領域の注目度があがってもいます。特に日本ではベンチャーキャピタルへ投資を行うLPサイドがディープテックへの投資割合を意識するようになった流れもあり、評価が高くなっている事情もあります。
 

技術が凄い≠ビジネス性

研究開発型スタートアップの評価が高くなってきたことは間違いないと思います。しかし、技術が凄いからビジネスになるというわけでは当然ありません。
 
スタートアップとして評価される技術とは、ビジネスとしての市場がある(もしくは期待できる)ことです。なので、いくら技術が凄くても当然評価されないこともあります。
 
特に研究開発型は、その名の通り研究開発を必要とします。つまり、資金も時間も比較的かかるリスクが存在します。なので、ビジネス可能性が大きくなければ、評価されずらいのが実態かと思います。逆に、ビジネス可能性が大きい事業は評価され、顕在化(資金調達など)しています。名大発スタートアップでも最も大きな評価を受けているのは累計調達額が300億に迫る、自動運転のティアフォーです。
 
ビジネス可能性が大きいと評価されるケースの例としては、ニーズが明らかで実現できればインパクトが絶大(例えば、ガンの新薬開発など)や既存市場を大幅に効率化可能(例えば、自動運転など)、成立すると強力な競合優位性を構築できる(例えば、ChatGPTのような大規模AIモデル)といったケースが挙げられます。
 

「研究開発とビジネスの間」に張る利点

研究開発領域は、すでにその道何年という研究者の方々が存在しており、専門性がない場合には勝てる余地がないように感じます。しかし、実際のところ研究分野の専門性と「技術のビジネス化」についての専門性というのは全く違うスキルです。私が感じる「研究開発とビジネスの間」の可能性はまさにこの点がポイントです。
 
研究領域の専門家はたくさんいても、その領域において本気でスタートアップとして大きな事業を創るという挑戦をしている人(技術のビジネス化にコミットする人)は、実は相当少ないです。ここが最も大きなチャンスだと思います。
 
詳細は割愛しますが、Acompanyが2019年に秘密計算(秘密分散方式)に着目したときは、研究としては40年近く歴史をもつ分野でした。しかし、国内でビジネス化に取り組んでいる企業は数社しかいませんでした。スタートアップとしては当時はほぼ存在していませんでした。Acompanyはそこに飛び込み、「研究開発とビジネスの間」に勝機を見出していきました。
 

気づいている人が少ないニーズに出会える

「研究開発とビジネスの間」を埋める仮説検証を通じ、技術を有効活用できるビジネスニーズの高いユースケースが発見できれば最高ですが、そうじゃない場合でも利点があります。それは「技術を使わない理由」を知ることができることです。
 
例えば、以下のようなフィードバックにはインサイト(赤字)が含まれます。
  • wwwしたくて興味を興味を持ったが、xxxという要件をクリアできないから使えない
    • →wwwにニーズが有る
    • →xxxがクリアできればいい
  • yyyがあるから採用する必要がない
    • →yyyのニーズが高い
  • 似たzzz(別技術)の方が有用だと思うから必要ない
    • →zzzの方が高く評価されている
 
このようなフィードバックを多く集めていくと共通点を見いだせます。自分が着目する技術とは別の技術にニーズがあることや、顧客が関心を寄せるユースケースが見えてくることなどです。これはニーズに直接紐づきかつ、多くの場合ほとんどの人が知らない貴重なインサイトとなります。
 

まとめ

  • 近年は有望なアイデアを発見する難易度はあがってきている
  • 技術起点の会社は「研究開発とビジネスの間」にある有望なアイデア発見のチャンスがある
  • 技術が凄いからビジネスになるというわけではない
    • ビジネス可能性が大きくなければ評価されずらい
  • 「研究開発とビジネスの間」に張る利点
    • 研究分野の専門性と「技術のビジネス化」についての専門性というのは全く違うスキル
    • その領域において本気でスタートアップとして大きな事業を創るという挑戦をしている人(技術のビジネス化にコミットする人)は相当少ないから、大きなチャンスがある
    • 「技術を使わない理由」からニーズに直接紐づきかつ、多くの場合ほとんどの人が知らない貴重なインサイトを得ることができる
 
パート②では研究開発とビジネスの間でのアイデア探索について書く予定です。
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