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起業5年で得た学び3選

はじめに

どうも、Acompanyの高橋です。最近は吉田沙保里にハマっています。
 
本記事はAcompany5周年アドベントカレンダー20日目の記事となります。
 
本日、2023年6月20日でAcompanyを創業して5年となりました。25歳のときに学生起業し経営の道に入り、20代の後半を丸々起業家であり経営者として過ごしました。
 
これまで会社の振り返りをする機会は結構多かったのですが、1起業家として学びを振り返るということをほとんどやっていなかったなと思い、今回は5年と切りもいいので、起業家としての学びを振り返っていきたいなと思います。
 
学生起業ということもあり、スタート時点でキャリアゼロからだったので、学んだことは山程あるのですが、今回はその中でも個人的にスタートアップ経営として重要だった学びを3つ取り上げたいと思います。
 
 

学び1:スタートアップは目指すもの

そもそもスタートアップとは何なのか?Y Combinator(以下、YC)創業者のポール・グレアムによるスタートアップの定義を参照すると、「スタートアップとは、急速に成長するよう設計された企業」です。
スタートアップとは、急速に成長するよう設計された企業のことです。新設されたというだけでその企業がスタートアップであるわけではありません。また、スタートアップがテクノロジーに取り組んだり、ベンチャー資金を取得したり、何らかの「出口」を持つ必要があるわけでもありません。唯一必要なことは成長です。スタートアップに関連付けられている他の全ては、成長から派生します。 - paulgraham.com (ChatGPTで翻訳)より
 
つまり、急速に成長することを目指す会社がスタートアップであるということですね。新しい会社であるとか、高度なテクノロジーに取り組んでいるとか、資金調達をしているなどは、スタートアップが持つことが多い特徴に過ぎないということです。
 
さて次に気になるのは、急速な成長とはどの程度なのか?ということかと思います。これについても言及されています。
YCの間における良い成長率は週に5-7%です。もし週に10%達成できれば、それは非常に優れているということです。もし1%しか達成できないなら、それはあなたがまだ自分が何をしているのかを理解できていないという証拠です。 - paulgraham.com (ChatGPTで翻訳)より
 
YCはシードアクセラレーターなので、初期のビジネス立ち上げ時で週に5-7%の成長があれば良好であるということですね。これは年間通すと、年12.6-33.7倍の成長ペースとなります。優れた指標の考え方がとても参考になるので、こちらの記事もぜひおすすめです。
How to Set KPIs and Goals (SUS 2019)
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当然、常にこの速度での成長が望ましいというわけではなく、もう少し成熟したフェーズでは、T2D3と呼ばれるベンチマークが良い目標であると言われているので、規模の増加に伴い適切な成長速度があります。
 
T2D3は、ARR $2M(約2.8億円)を起点として毎年Triple(3倍)、Triple(3倍)、Double(2倍)、Double(2倍)、Double(2倍)と成長させる曲線のことを指します。ARRがよくわからないという方は、ARR=年間売上と一旦は理解していただければ大丈夫です。
Helping Entrepreneurs “Triple, Triple, Double, Double, Double” to a Billion-Dollar Company
Helping Entrepreneurs “Triple, Triple, Double, Double, Double” to a Billion-Dollar Company
 
国内ではSmartHRを参考にARR1億円からT2D3をベンチマークするケースが主流な印象です。
 
簡単にまとめると、「スタートアップとは、急速に成長するよう設計された企業」であり、目線とすべき成長率は初期で週5-6%、ARR1億-3億からはT2D3が1つの成長率のベンチマークとなります。
 
特に、急速に成長するように”設計された企業”という点が肝だなと思っています。何を言いたいかというと、僕は漠然とスタートアップだと思って経営をしていましたが、高度なテクノロジー(秘密計算技術など)に取り組んでいるとか、資金調達をしているだけの会社で、別にスタートアップではなかったという気付きを得る瞬間がありました。この気付きのあと、自分自身に大きなマインドチェンジが起きた感覚がありました。
 
スタートアップは失敗する割合のほうが高く、不確実性を織り込んでいるので、ここでいう”設計された”(原文では、「designed」)という表現は、「急成長の目標を定め、狙っていくこと」と私自身は理解をしました。これまでは漠然と「この技術が広まれば大きな価値がうまれるはずだ」といったマインドで、目標として急成長が最優先ではなかったですし、ましてや狙うこともできていませんでした。マインドチェンジが起きてからの最も大きな変化は事業戦略を考える際の最優先となる問が「どうやって急成長を実現するか?」に変化したことです。
経営戦略を考える際の最優先となる問
Beforeどうやってこの技術をビジネスとするか?
Afterどうやって急成長を実現するか?
 
この変化から得たベネフィットはとても大きく、事業の捉え方のスケールが広がり、手段と目的の逆転が格段に起きにくくなりました。例えば、これまでアイデンティティのように考えていた技術力などの要素は、急成長を実現するための手段であるという認識に変わりました。
 
もちろん、偶発的に急成長を実現し、スタートアップに分類される企業もあると思います。しかし、それは非常に限られたケースだと思いますし、長期的な急成長の実現と耐えうるための組織や仕組み作りを偶然実現し続けることは非常に難しいと思います。
 
なので、学びとしてまとめると、5年、10年というタイムスパンで急成長を続けるためには、スタートアップは明確に目指すものだということです。
 

学び2:Why youは必要ない

2つ目の学びは、「Why you」についてです。「Why you」とは、ざっくりいえば「なぜあなたがこの事業をやるべきなのか?」ということです。
 
起業準備中や初期段階だとあらゆる方面から言及されました。ビジコンに出ていたときは、評価項目になっていたり、「あなたがやる必要がわかりません」「あなたはその分野の専門性があるわけではないですよね?」という審査員のコメントを何度も聞いてきました。
 
しかし、「Why you」は、投資家や他人から「この人はこの事業で勝てるのか?」「この人はこの事業をやる合理性があるのか?」「この人は本気でこの事業をやりきることができるのか?」などを外から見た視点での理由付けでしかないなと思います。
 
もちろん、優れた実績や経験を持っている人は当然それを活かすべきだと思います。しかし、私のようにビジネス経験をもっているわけでもない起業家は「Why you」を意識しすぎると選択肢を狭める足かせにすらなると思っています。
 
Acompanyが取り組むプライバシーテックの領域も「Why you」は一切ありませでした。しかしながら、今は「Why you」や「Why Acompany」への回答が生まれています。
 
今だからはっきり言えることは、「Why you」は後から作れる、ということです。
 
スタートアップは数ヶ月という短期戦ではなく、基本的には少なくとも数年をかけて成長していく長期戦です。その中で、1-2年も本気で挑戦していれば、その領域の経験や実績が生まれることで、結果的に「Why you」が作れている状態となります。なので、最初から「Why you」がある必要はないというのが私の結論です。
 
 
極論、生まれた瞬間から「Why you」を持っている人などいないですし、ある時点での原体験や実績など通じて「Why you」は生まれているので、無理に当てはめようとせず、自分から生み出しにいくほうがいい場合が多いのではないかなと思います。
 

学び3:最もインパクトがあるのは人

3つ目の学びは、人についてです。
この5年間で、会社が大きく変化した転換点を思い出すとほとんどがキーマンの参画です。
 
私は、「ビジョナリー・カンパニー2」をバイブルとして何度も何度も読み返しているのですが、その中でも最も好きなのが「だれをバスに乗せるか」という章です。
 
偉大な企業への飛躍をもたらした経営者は、まずはじめにバスの目的地を決め、つぎに目的地までの旅をともにする人びとをバスに乗せる方法をとったわけではない。まずはじめに、適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうべきかを決めている。要するに、こう言ったのである。「このバスでどこに行くべきかは分からない。しかし、分かっていることもある。適切な人がバスに乗り、適切な人がそれぞれふさわしい席につき、不適切な人がバスから降りれば、素晴らしい場所に行く方法を決められるはずだ」
- 『ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則』
 
最初に上記を読んだときは、「人が大事なのはわかる。とはいえ、いい事業を作る方が大事やろ」と思っていました。しかし、時間が経てば経つほど、「まじで人だ!!!」と思うようになっていきました。
 
先程の事業についても、結局事業を作っていくのは人です。なので、優れた事業を作るためにも優れた人が必要になるわけです。
 
「解決する課題は適切か?」「どういう価値を生めるか?」「誰をターゲットにするか?」「どうすれば優位性を生み出すことができるか?」…etc.
 
という、数多の問の答えを考えて、独自の価値を作っていく必要があります。組織の拡大にあわせて、「誰」と議論を重ねるかでアウトプットの質が大きく変わるという実感を持ってきました。
 
事業が順調に立ち上がったらいい人を採用しようと悠長なことを言っていると、事業が立ち上がることなくそのまま死んでしまうと思います。(多分、Acompanyは危なかった)そのくらいキーマンが採用できるかどうかは、会社の分岐点となります。
 
また、どんな人がいるかによって、仕組みや制度の前提も変わります。適切な人だけが集まっていると、マネジメントコストや制度を細かく設計する必要性が下がります。例えば、Acompanyでは「Be Cool」というバリューで邪悪な人はふさわしくないという定義を置いています。これによって、制度を性善説で設計しやすく、コストが下がります。これが性悪説で設計になると、今の比ではなく設計や運用コストがかかってしまいます。
株式会社Acompany - カルチャーデック
株式会社Acompany - カルチャーデック
 
プロ経営者のFrank SlootmanもSnowflakeのCEOになって「最初の100日間」で何をしたかというインタビューで「人員の整理」と回答しています。
最初の90日間、または30日間のうちにやることは、人員の整理です。「間違った人をバスから降ろして、正しい人をバスに乗せる」というアメリカでよく使われるフレーズがあります。でも、ほとんどの人はそうしません。誰もいなくなることを恐れるから、新しい人を先に見つけようとするんです。私の場合は、適していないと確信したらすぐにアクションをとります。機能していないことに対しては、すぐにでも状況を変えるべきだと考えているからです。 - ARR1,000億円「Snowflake」CEOの経営論──すべてを異次元成長へ導くプロ経営者・Frank Slootmanに聞く より
 
この5年間で間違いなく言えることは「適切な人がバスに乗ってくれることが最もインパクトがあった」ということです。
 
事業アイデアも確かに重要なのですが、Acompanyはピボットを重ねてきています。そのピボットがよりよい方向に実現できたのも、適切な人がいたことが大きいです。R&Dに優れたメンバーや法律に精通しているメンバー、エンタープライズ領域の経験をもつメンバーなどがいなければ、実現できなかった意思決定が沢山ありました。
 
いま、Acompanyというバスに乗ってくれているメンバーの方々には本当に感謝しています。
 
もし今からゼロスタートで事業を始めるとしても、まず「だれにバスに乗ってほしいか」を考えると思います。
 

おわりに

今回は私が5年間を経て、重要だったと思う学びを3選して紹介しました。
こうやって文章にすると、至極当たり前のことばかりですね。
ただ、「言うは易く行なうは難し」というのが経営だなと痛感する日々でした。
経営をすること自体は、凄く高度な思考や意思決定はほとんど必要がなく、如何に楽な方に流れそうになる気持ちや誘惑に気が付き、適切な意思決定を繰り返していけるかに尽きるなと思います。
振り返るとあっという間の5年間で、理想に対しまだまだ遠すぎるなと感じてばかりですが、次の5年、10年を見据えて、ベストを尽くしていきたいと思います!
 

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