技術に賭けるスタートアップの利点

Acompanyは学生起業からスタートし、技術を起点に事業チャンスを探索し続けながら今に至ります。この過程で技術スタートアップの難しさや利点を体感してきました。
今回はメリットに焦点をあて、「技術に賭けるスタートアップの利点」というテーマで記事を書いていきたいと思います。
ディープテック、研究開発型、〇〇テックと、技術に賭けるスタートアップの幅はそれなりに広いです。なので、今回の記事の対象としては、技術難易度が一定存在し、自社の一番の強みを技術と定義しているスタートアップを想定しています。
技術に賭けるスタートアップの利点
技術に賭けるスタートアップの利点という観点では、一般的に競合の参入障壁が高さや言語の壁を飛び越えたスケールを作りやすいなどが挙げられます。
しかし、そういう観点は詳しく色々なところでまとめられているので、今回は実際の起業家視点で感じる利点にフォーカスし、今回の記事では僕自身が強く感じた2つの利点を取り上げます。
- 時間の投資で強みが作れる
- 優秀な仲間を集めやすい
1. 時間の投資で強みが作れる
冒頭話したように僕自身は学生起業でスタートしています。当然潤沢な資金などあるはずもない。事業のために投資できるものは”時間”くらいしか持っていませんでした。
ビジネスの経験も知見もない自分が勝てるとしたらどんな領域だろうかと考えていました。当時の結論は大きく2つ。
1つ目が、自分がターゲットになるような事業。
2つ目が、お金ではなく能力と時間リソースの透過が競争優位になる事業。
この内容をX(当時Twitter)ツイートしたのですが、かなり反響をいただきました。
上記の結論からAcompanyは最初に学生向けの事業を展開しました。しかし、学生向けのサービスは市場規模の観点で難しく、その後ブロックチェーン領域へピボットを経て、後者の戦い方にシフトしていきました。そこからさらに、秘密計算へと領域を移しながらビジネスを形にしていきました。
僕たちが秘密計算に着目した2019年末当時は、日本語の情報はほとんどなく、用語も秘密計算と秘匿計算で統一されていませんでした。スタートアップもほとんど存在せず、ぱっと調べて出てくるのは国内で1社(海外でも10数社)くらいでした。
秘密計算を使ったサービスを作ろうとOSS(オープンソースソフトウェアの略、公開されたプログラムのこと)を色々試しましたが、実用的なOSSは見つかりませんでした。なので、秘密計算エンジンの独自開発に踏み切りました。現在、ここで開発を始めた秘密計算エンジン「QuickMPC」はOSSで公開しています。
↓2020年のTwitter(現X)投稿
このような”時間”をひたすら投下し、独自での秘密計算エンジン開発や情報発信を続けたことで、秘密計算領域の主要企業の一社に食い込むことができました。
2021年7月には、日本経済新聞の記事で秘密計算の事業者として大手企業に並び取り上げられるまでになりました。

創業メンバーは、秘密計算の専門性は元々一切持っていませんでした。論文や文献を読み漁ったり、有識者の先生に話を聞きに行ったりと、愚直な活動を行いました。結果、今ではこの領域の専門家として扱われるようになりました。
僕らのケースのように、新しい技術領域では最初にお金や知見がない状態でも、強みの構築を行うことができます。この点は今強みを持っているわけではない起業家が技術領域に賭ける大きなメリットになると思います。
2. 優秀な仲間を集めやすい
Open AIのCEOであり、元Yコンビネーターの代表だったサム・アルトマン氏の記事に僕が伝えたいエッセンスがほぼ全て述べられています。
該当記事の冒頭をChatGPTで翻訳。
起業に関する最も逆説的な秘密は、簡単なスタートアップよりも難しいスタートアップの方が成功しやすいことが多いということです。難しいスタートアップには、ほとんどのスタートアップよりもはるかに多くの資金、時間、調整、または技術開発が必要です。良い難しいスタートアップとは、それがうまくいけば価値があるものです(解決する価値のある難しい問題もありますが、すべてではありません!)。 Hard Startups より
技術に賭けるスタートアップは、おそらく技術が非常に魅力的であるが実用化の難易度が高いでしょう。そうでないならばその技術に張るべきではないはずです。また実用化の難易度が低いならば資金体力がある競合に勝つのはとても困難になるはずです。
その前提において、優秀であり誰でもできる問題よりも自分じゃなければ解決できないかもしれない問題に挑戦したい人にとって、(魅力的だけど難しい)技術に賭けるスタートアップは魅力的なフィールドとなります。
Acompanyも秘密計算の可能性、現在ではより拡張してプライバシーテック(秘密計算や連合学習、合成データなど)の魅力に共感し参画してくれているメンバーが何人もいます。彼らは魅力的な他社でも活躍できるメンバーです。それでもAcompanyが選んでもらえる一つの大きな要素に技術的な挑戦があるのです。
最後に
本当は3つの利点を取り上げる予定だったのですが、思ったよりも文量が多くなったため、今回は技術スタートアップの利点を2点取り上げました。取り上げ切れなかった部分はまた別の機会に記事にしたいと思います。
今回取り上げきれなかったくらいに、技術に賭けるスタートアップには利点があります。過去をみれば、TOYOTAやHONDAも技術に賭けるスタートアップとして日本を代表する会社となりました。技術が好きな起業家の一人として、次の世代を代表するようなテクノロジーカンパニーを創る挑戦をしていきたいと思います。